不登校の生徒に家庭教師が関わるとき、いちばん大切なのは 「学力のサポートよりも、まず安心の土台をつくる」 という姿勢が大切と考えます。この点を踏まえて不登校生本人と対応することが基本だと考えます。

■ 1. 家庭教師は “学校とは違う安心できる存在”
不登校の背景に何があるかを探っていきます・・・
・人間関係の不安
・自己否定感
・学習への苦手意識
・繊細さや感受性の高さ
・環境の変化
などがあります。
家庭教師が「勉強を教える人」ではなく、
“安心して話せる大人” “否定しない味方”
であることを伝えることから始めます。
- 無理に学校の話を聞き出さない
- 生徒が話したいことだけを受けとめる
- 表情や声のトーンを柔らかく
- 「大丈夫」「ゆっくりでいいよ」という言葉がけを意識
■ 2. 最初は「雑談 7:学習 3」くらいのバランスで
いきなり学習に入ると、生徒の緊張が増してしまいます。
初回〜数回は、生徒のペースを見ながら 雑談を中心 にします。
- ゲーム、アニメ、趣味など興味のある話題を広げる
- 「今日はプリント1枚でもできれば大成功」などハードルを下げる
- ホワイトボードを使った簡単な問題、ミニクイズなど負担の少ない導入を用意
勉強の量よりも 「家庭教師といる時間は安心」 と思ってもらうことが最優先です。
■ 3. 生徒の “できた実感” を丁寧に積み上げる
不登校の生徒は、自信を失っていることが多いです。
小さな成功体験を積むことが、自己肯定感の回復につながります。
- できた部分だけを具体的にほめる
「字がていねい」「考え方が筋が通っている」など・・ - 1回の授業で “できたことリスト” を作る。 これは、達成感を可視化でき、自己肯定感を高めます。
- 長時間集中が難しい場合は 15分×3 のように細切れにする
「今日はここまでできただけで十分」と、明確に区切ることがポイントです。
■ 4. 学習計画は「本人と一緒につくる」
決められたカリキュラムを押しつけるのではなく、
生徒の意見を取り入れて一緒に計画を作る ことで、自主性が育ちます。
- どの教科から始めたいかを本人に選ばせる
- 今日の目標を生徒に言葉にしてもらう
- 無理な場合は「今日は座って話せただけでもOK」にする
主体的に選ぶ経験は、学校復帰にもつながる大事な力です。‥必ずしも、学校復帰を目指さなくてもい。
■ 5. 家庭との連携を大切にする(ただし“圧”はかけない)
家庭教師は、家族との橋渡し役でもありますが、
生徒の心を守るために プレッシャーの原因にならない距離感 が必要です。
- 親には「できたことだけ」を共有する
- 課題がある場合は生徒の前で話さない
- 保護者の期待が過度であれば、穏やかに「人それぞれのペース」を説明する
家庭教師が生徒と親の間でクッションになれると、家庭の空気も柔らかくなります。
ただし、親と子の関係が原因で、不登校になっているケースもあるので、その点に関する注意も必要。
■ 6. 学校復帰を「目標」にしない。まずは“日常のリズムづくり”
不登校の子にとって、学校に戻ることがゴールとは限りません。
家庭教師ができるのは 「生活のリズムを取り戻す手助け」 です。
- 決まった時間に家庭教師が来ることが生活の軸になる
- 朝に軽い課題、夜は振り返りなど、日中のリズムづくりをサポート
- 本人が「行けそうかな」と言い出すまで無理に学校の話をしない
自分で動ける力が育てば、自然と次のステップへ踏み出します。
■ 7. 生徒の“感受性や繊細さ”を理解する
不登校の背景に、感受性の高さやHSP傾向がある場合も多いです。
その繊細さは弱さではなく、むしろ大切な資質。
- 音・光・視線など環境刺激に気を配る
- 宿題は量より質、短時間で深く集中できるよう工夫
- ひらめきや興味に寄り添う
「君の感じ方は間違ってないよ」と伝えるだけで、表情が変わる子もいます。
■ 8. まとめ
家庭教師が不登校の生徒にできることは、
勉強を教える前に “心の安全基地” をつくること です。
安心 → できた体験 → 自信 → 自主性
この流れができると、生徒はゆっくりと前へ進み始めます。