ストーリー・フォト 北京 昆明湖

北京にある昆明湖——歴史と自然が織りなす静寂の水景

北京の喧騒を離れて

北京といえば、天安門広場や紫禁城、さらには万里の長城といった歴史的建造物がすぐに思い浮かぶ。しかし、これらの観光地を巡る合間に、ふと都会の喧騒を忘れられる場所がある。それが「昆明湖」だ。

昆明湖は、北京市の西北部、海淀区にある頤和園の中心をなす湖であり、中国の伝統的な庭園文化を体現する代表的な名所の一つである。清朝時代に築かれたこの人工湖は、周囲を取り囲む美しい風景とともに、訪れる人々に静寂と安らぎを提供している。

昆明湖の歴史と起源

昆明湖の歴史は、清朝の乾隆帝の時代(18世紀)にまで遡る。この湖の前身は、金代(12世紀)の時点ですでに存在していた「瓮山泊」という天然の湖だった。しかし、乾隆帝はこの地域を避暑地として整備し、湖を大規模に拡張させた。その後、頤和園の一部として発展し、皇室の庭園としての役割を担うようになった。

19世紀後半、英仏連合軍による破壊を経て、光緒帝の時代に再建され、現在の姿になった。湖の面積は約2.2平方キロメートルと広大で、頤和園全体の約3分の2を占める。湖の水は玉泉山から引かれており、周囲の庭園とともに風光明媚な景観を形成している。

昆明湖を巡る旅

1. 十七孔橋の優美なアーチ

昆明湖を訪れると、まず目に飛び込んでくるのが「十七孔橋」だ。この橋は湖の南東に位置し、南湖島へと続いている。名前の通り、17のアーチが連なる美しい石造りの橋で、清代の職人技が随所に光る。橋の欄干には、500以上の獅子像が彫刻されており、その繊細な造形には圧倒される。

特に冬になると、湖が薄氷に覆われ、橋の影が湖面に映る風景はまるで絵画のような美しさを誇る。また、夕暮れ時には夕日が橋を黄金色に染め上げ、幻想的な雰囲気に包まれる。

2. 仏香閣から望む絶景

昆明湖の北側には、「仏香閣」という高さ41メートルの壮麗な建物がそびえている。ここは頤和園の中でも特に人気の高い場所であり、急な石段を登ると、眼下に広がる昆明湖の全景を一望できる。湖の向こうには北京市街地が広がり、晴れた日には遠くの山々まで見渡せる。

仏香閣は、乾隆帝が建立した仏教寺院の一部であり、八角形の美しい建築様式を持つ。その屋根の上には青く輝く琉璃瓦が施されており、光が当たると神秘的な輝きを放つ。湖面の穏やかさと相まって、心が洗われるような静けさを感じることができる。

3. 長廊を歩く優雅なひととき

頤和園の中でも特に有名なのが「長廊」と呼ばれる回廊である。この回廊は、湖の東岸を沿うようにして728メートルにわたって続いており、柱や梁には中国の歴史や神話を描いた美しい絵画が施されている。

この長廊をゆっくりと歩きながら、湖の風景を楽しむのは格別のひとときである。春には桜や柳が湖畔を彩り、秋には紅葉が美しく映える。風が穏やかな日は、湖面に映る長廊の影がゆらゆらと揺れ、時間がゆっくりと流れているかのような錯覚を覚える。

4. ボートで湖上散策

昆明湖の魅力を最大限に味わうなら、ぜひボートに乗ってみるのがおすすめだ。湖には手漕ぎボートや電動ボート、さらには古風な龍船などがあり、自分のペースで湖を巡ることができる。

特に夏場は、水面をわたる涼しい風が心地よく、湖の真ん中から眺める頤和園の景色はまた格別だ。遠くに仏香閣を望みながら、湖の青さと空の青さが溶け合う風景を楽しむのは、北京観光のハイライトの一つと言えるだろう。

昆明湖がもたらす癒し

北京を訪れたら、歴史的な名所巡りの合間に、ぜひ昆明湖へ足を運んでほしい。広大な湖と美しい庭園、優雅な建築が織りなす景観は、都会の喧騒を忘れさせてくれる。十七孔橋を渡り、仏香閣からの眺めを堪能し、長廊を歩きながら歴史を感じ、ボートで湖上散策を楽しむ——そんなひとときが、旅の思い出に深く刻まれることだろう。

自然と歴史が調和した昆明湖は、ただの観光地ではなく、心を落ち着かせる場所でもある。時間が許す限り、この湖のほとりで静かな時間を過ごし、北京のもう一つの魅力を感じてほしい。

北京の運河建設の歴史

北京の運河は、歴史的に重要な水路網の一部であり、特に「京杭大運河」として知られる。京杭大運河は、隋朝(7世紀)の時代に大規模な建設が開始され、後に元・明・清の各時代にわたって拡張・整備が進められた。

この運河は、中国の南北を結ぶ輸送路として、経済・軍事・文化の発展に貢献してきた。北京においては、元の時代(13世紀)にクビライ・カーンによって首都が置かれるとともに、運河を通じて食料や物資が南方から供給されるようになった。

特に明代には、北京の宮廷と市民の生活を支えるために、運河が積極的に整備され、通州地区が北京への物資輸送の拠点として発展した。また、清朝時代にはさらに改良が加えられ、頤和園や昆明湖を含む宮廷庭園にも水を供給する役割を果たしていた。

現在では、一部の運河が埋め立てられたり、水運の役割が縮小されたりしているが、依然として観光地や文化遺産としての価値を持ち続けている。

上の写真は、昆明湖に面する宮殿玄関での筆者(Tetsuro Higashi)。 民間人でこの宮殿に宿泊したのは私が初めて・・とのこと。 この撮影当時(2016の秋)では(私が)ヨーロッパのメジャー展示会で主賓であったことから、中国の写真協会関係者は、私が日本で最も著名な写真家であると”勘違い”していたらしい。半端でない接待ではあったが、”夜の接待”はお断りしましたので、ここに書き記すこともできます。

ここで展示した画像には背景にモヤがかかっており、趣ある雰囲気を醸しているが、実はスモッグが原因の煤煙である。 この当時から8年くらい経った今は、かなりクリーンになった・・と中国の友人から聞いてます。 中国はもともと、共産主義国家なので、対外的にはいろいろと問題視されてますが、私がかかわった人たちはみな紳士的で良い人ばかりでした。その時に係ったウイグル出身の中国人とは現在もお付き合いが続いてます。

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太陽が高く昇る前の昆明湖は、静寂に包まれていた。水面は鏡のように滑らかで、対岸の頤和園の屋根の曲線を映し出していた。遠くで鷺が飛び立ち、かすかな波紋が広がる。私は湖畔の石畳を歩きながら、湖の青と空の青の違いを確かめるように目を細めた。

この湖には物語がある。歴史の層が重なり、時代のうねりがその深みの中に沈んでいる。西太后がこの湖を整備させ、静養の地としたこと。戦火が訪れ、また再建されたこと。そんな過去の痕跡が、風に乗ってささやかれるように思えた。

ボートがゆっくりと湖を滑り、岸辺には地元の人々が集まっていた。老人が太極拳をし、若者はスマートフォンで湖を撮影している。私はふと、自分がこの場にいる意味を考えた。観光者としての目線ではなく、ただ湖の一部としてここにいることができるのだろうか。

湖面に映る自分の影を見つめながら、何かを掴もうとしているような気がした。それは時の流れかもしれないし、ただの感傷かもしれない。だが、この場所には確かに何かがあった。私が過ぎ去った後も変わらずそこにあり続ける何かが。

遠くで鐘の音が響いた。朝の静寂が解け、湖が新しい一日を迎える準備をしていた。私は深く息を吸い、湖の匂いを胸に刻みながら、ゆっくりと歩き出した。

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個人経営で個別指導塾 塾長を50年続けてきました。 駅前で大手がひしめく中、運営してくことの難しさと個人経営であるが故の多様な在り方を実践してこれたことへの自負とがあります。 学習塾とはどうあるべきか、親は子へどのような接し方が”理想・現実”であるのか、ここにはすべて塾長の本音を記していきます。 そして今、老年期を迎え、「楽しく生きること」への模索を綴ってます。

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