失敗する教育 楽しく勉強すれば成績は上がる

「楽しく勉強すれば成績は上がる」を教育者として親や子に伝える

「楽しく勉強すれば成績が上がる」という考え方は、一見シンプルで希望に満ちていますが、教育現場では必ずしもその通りにはいかない現実があります。このテーマを深掘りし、親や子どもに分かりやすく伝えるためには、教育の本質や目的、勉強における「楽しさ」の意味、そして成績向上のプロセスを正確に理解してもらう必要があります。


楽しさの捉え方と教育の目的

まず、勉強における「楽しさ」とは何でしょうか。多くの人が「楽しい」という言葉を「娯楽」と混同しがちです。しかし、教育における楽しさは、単なる面白さや遊び感覚ではなく、知識を得ることの喜びや、課題を克服したときの達成感を指します。たとえば、難しい数学の問題を解いたときの喜びや、新しい歴史的な知識を知ったときの驚きは、娯楽的な楽しさとは異なる「学びの楽しさ」です。

教育の目的は、子どもが社会で自立し、自己実現を達成するための基礎を築くことです。そのためには、楽しさだけでなく、努力や忍耐も必要不可欠です。楽しさだけに依存する教育は、一時的な満足感を与えるかもしれませんが、長期的には子どもの成長を妨げる可能性があります。


「楽しい勉強」と「結果を出す勉強」の違い

勉強が楽しいと感じるかどうかは個人差があり、得意な教科や興味のある分野では楽しさを感じやすい一方、苦手な教科では苦痛を感じることも少なくありません。このとき、「楽しい勉強」にこだわるあまり、子どもが苦手科目を避け続けると、学力の偏りが生じる可能性があります。

たとえば、子どもが算数が好きで国語が嫌いだとします。算数ばかりを「楽しい」と感じて勉強していると、算数の成績は上がるかもしれませんが、国語の成績は伸び悩む可能性があります。一方で、国語に苦手意識を持つ子どもが、少しずつできるようになる成功体験を積み重ねると、次第に勉強の楽しさを見出すことができます。このように、「楽しい」だけに焦点を当てるのではなく、できる喜びや、目標達成のプロセスに注目することが重要です。


「失敗する教育」とは

楽しいだけを重視する教育の失敗は、主に以下の点に起因します:

  1. 努力の軽視
     楽しいことばかりを求めると、子どもは努力を嫌い、目標を達成するための忍耐力が育たなくなります。しかし、努力を積み重ねる中で得られる達成感こそが、本当の楽しさにつながります。
  2. 外部動機に依存する学び
     「楽しい」だけを追求すると、学びが外部的な報酬(ゲーム感覚や褒美)に依存しやすくなり、子ども自身が内発的に勉強をする動機が育たなくなります。長期的には、内発的な動機づけが成績向上にとって重要です。
  3. 本質的な学びの欠如
     楽しい教材やアクティビティだけを使用していると、子どもが実際に必要な基礎力や応用力が養われない場合があります。教育の目的は、知識を楽しむだけではなく、それを応用し、現実の問題を解決する力を養うことです。

どうすれば楽しく、かつ効果的な勉強ができるか

親や教育者が目指すべきは、「楽しい勉強」と「努力を通じて得られる成功体験」を組み合わせた学びです。以下のステップを提案します。

  1. 興味の種を見つける
     まず、子どもが何に興味を持っているのかを知ることが重要です。興味のある分野から学びをスタートさせると、子どもは勉強に対して前向きになります。
  2. 成功体験を積み重ねる
     苦手な分野でも、小さな目標を設定し、達成感を味わえるようにします。たとえば、1つの計算問題を正しく解けたら褒める、1ページ分の文章を読めたら称賛するなど、具体的な達成を喜ぶ機会を増やします。
  3. 努力を楽しさにつなげる工夫をする
     ゲーム感覚でポイントを稼ぐ方式や、グループで協力する学びを取り入れることで、努力そのものを楽しく感じられるようにします。ただし、過度に外部的な報酬に頼らないことが重要です。
  4. 目標を明確にする
     成績を上げることが目的ではなく、将来の夢や目標に向けた「ステップ」であることを伝えます。たとえば、「この勉強ができるようになると、宇宙飛行士になるための準備ができるね」といった具体的なビジョンを示します。

教育者としてのメッセージ

勉強が楽しいと感じられるようになることは素晴らしいことですが、楽しさだけでは成績を上げることは難しい場合があります。重要なのは、努力と成功体験を通じて楽しさを見出し、成長を感じられる学びの環境を提供することです。

親や教育者ができることは、子どもの学びをサポートし、失敗を恐れず挑戦する姿勢を育むことです。そして、勉強が楽しいだけでなく、努力の先にある達成感や成長の喜びを伝えることが、子どもの成績向上と将来の成功につながります。

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個人経営で個別指導塾 塾長を50年続けてきました。 駅前で大手がひしめく中、運営してくことの難しさと個人経営であるが故の多様な在り方を実践してこれたことへの自負とがあります。 学習塾とはどうあるべきか、親は子へどのような接し方が”理想・現実”であるのか、ここにはすべて塾長の本音を記していきます。 そして今、老年期を迎え、「楽しく生きること」への模索を綴ってます。

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