
私は長年、人物写真を撮り続け、多くの人の身体と向き合ってきました。
その経験から強く感じることがあります。
人の数だけ性別がある。
この言葉は、生物学的な分類を否定するという意味ではありません。人はそれぞれ異なる人生を歩み、異なる価値観を持ち、異なる「自分らしさ」を生きています。その違いは、性別という枠組みだけでは語り尽くせないほど豊かなものです。
芸術の世界では、古代ギリシャの彫刻からルネサンス絵画、日本の浮世絵、現代写真に至るまで、人の身体は「男性」「女性」という単純な区分ではなく、一人ひとり異なる存在として描かれてきました。同じポーズをとっても、骨格、筋肉の流れ、姿勢、表情、視線、そして光の受け方によって、まったく違う作品になります。
だからこそ、私はこのブログで人物写真を紹介するとき、単に「裸」を見てほしいとは考えていません。
見ていただきたいのは、その人だけが持つ身体の個性です。

肩の傾き、指先のしぐさ、立ち方、呼吸のリズム。そこには、その人が歩んできた時間が刻まれています。同じ人間は一人として存在せず、だからこそ表現もまた無限に生まれます。
絵を描く人、彫刻を作る人、写真を撮る人にとって、本当に大切なのは「男性らしさ」や「女性らしさ」を固定したイメージで描くことではなく、目の前にいる一人の人間を丁寧に観察することではないでしょうか。
人間の身体は、美術解剖学だけでは説明できない魅力を持っています。そこには感情があり、経験があり、生き方があります。そのすべてが作品の中で静かに語りかけてくるのです。
私はこれからも、クリエイターの皆さんが固定観念にとらわれず、多様な人体表現に触れられる場を提供していきたいと思います。
人の数ほどに個性があり、人の数ほどに美しさがあります。
そして、その美しさを見つける眼こそが、芸術を創り出す最初の一歩なのだと私は信じています。