私が養老孟司先生に深い敬意を抱くのは、先生が常に「人間も自然の一部である」という視点を持ち続けておられるからです。
現代社会では効率や合理性が重視され、人は頭の中だけで物事を判断しがちです。しかし養老先生は、『バカの壁』をはじめとする数々の著作を通じて、身体で感じること、生き物や自然と向き合うことの大切さを語り続けてこられました。
私は七十年以上生きてきましたが、毎日の散歩や写真撮影、庭で自然に触れる時間の中で、先生の言葉の意味を実感することがあります。人間は知識だけでは生きられず、身体感覚や自然とのつながりの中でこそ本来の豊かさを取り戻せるのだと思います。
また、教育者としての立場から見ても、養老先生の「答えを教えるのではなく、自分で考える力を育てる」という姿勢には大いに共感します。受験指導に携わる私自身、知識の詰め込みだけではなく、子どもたちが自ら考え、自ら学ぶ力を身につけることこそ大切だと考えています。
養老孟司先生は、私にとって単なる解剖学者やベストセラー作家ではありません。自然と人間、知識と身体の関係を見つめ直すきっかけを与えてくださった、現代日本を代表する知性の一人です。
