
身体を撮る前に、その人を見る
初めてヌードになる女性にとって、撮影という行為は決して日常的なものではありません。
服を脱ぐということは、単に身体を露出することではない。
それまで衣服によって守られていた「自分」という境界を、ほんの少し他者の前に開くことでもあります。
だからこそ、写真家が最初に見るべきものは身体ではなく、その人自身なのだと思います。
どんな人なのか。
何を考えているのか。
何に緊張し、何に安心するのか。
どんな瞬間に自然な表情になるのか。
そうしたものを知らずに、ただ「裸体」という被写体だけを見るなら、写真はどこか薄いものになってしまいます。
身体は、その人の人生から切り離されたものではないからです。
裸体は「完成された美」ではない
私は、裸体を最初から「美しいもの」と決めつける必要もないと思っています。
身体には、若さもあれば、時間の痕跡もあります。
肌の質感、骨格、筋肉、柔らかさ、傷、癖。
そこには、その人が生きてきた時間が刻まれている。
だから私は、身体を一種の**「風景」**として考えることがあります。
風景には、完全なものも不完全なものもありません。
朝の光があれば、夕暮れの光もある。
晴れの日もあれば、雨の日もある。
同じ場所であっても、季節や時間によってまったく違う表情を見せる。
人間の身体も、それとよく似ています。
若い身体だけが美しいのではない。
完璧な身体だけが写真になるのでもない。
むしろ、そこにその人固有の時間が見えるとき、身体は単なる「裸体」から「人間の姿」へと変わっていくのではないでしょうか。

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