
人物写真では、ポーズを細かく指示することが少なくない。しかし私は、できるだけ教えないようにしている。人は指示されるほど、自分らしさを失ってしまうことがあるからだ。会話を重ね、同じ時間を過ごし、緊張がほどけたとき、人はふと本来の自分に戻る。その何気ない仕草や眼差しには、演出では生まれない美しさが宿っている。私が待っているのは「正しいポーズ」ではない。その人が飾ることをやめ、自分自身としてそこに立つ、かけがえのない一瞬なのである。
私は、このモデルさんにポーズを指示した覚えはない。それでも、モデルは素晴らしいポーズを創り、素晴らしい作品となって(私の期待に)応えている。