転生したらスライムだった件(32)
792円

『転生したらスライムだった件』を読んで・・
異世界転生作品は数多い。
勇者になる者もいれば、剣士になる者もいる。王子や貴族として生まれ変わる者もいる。
しかし『転生したらスライムだった件』の主人公は違う。
彼は、社会の誰からも注目されない存在として生まれ直す。
スライム。
ゲームの世界では、最初に倒される雑魚モンスターである。
私は長く教育の現場に身を置いてきたが、世の中にはしばしば「スライム扱い」される人々がいることを知っている。
学校で目立たない子。
集団に馴染めない子。
学歴や肩書きで評価されない人。
社会の片隅で生きる人。
彼らは能力がないのではない。
ただ、評価される場所にいないだけなのである。
リムルは、そんな存在の象徴にも見える。
興味深いのは、彼が力を得ていく過程で「支配者」になるのではなく、「共同体の創造者」になっていくことだ。
仲間に名前を与え、
居場所を作り、
敵であった者とも対話しながら国を築いていく。
そこには現代社会が失いつつある理想がある。
競争ではなく共生。
排除ではなく包摂。
『転スラ』の本質は、最強主人公の無双物語ではなく、「居場所づくりの物語」なのではないかと思う。
私は不登校の子どもや、生きづらさを抱える若者について考えることが多い。
その視点から見ると、テンペストという国は非常に興味深い。
人間、ゴブリン、オーク、リザードマン、鬼人。
本来なら対立する種族が共に暮らしている。
現実社会で言えば、
成績上位者も、
発達特性を持つ子も、
不登校経験者も、
芸術家肌の子も、
同じ社会の中で尊重される世界である。
理想論と言われるかもしれない。
しかし物語とは、本来そうした「まだ存在しない未来」を描くためにある。
だから私は『転生したらスライムだった件』を、単なる異世界ファンタジーとしてではなく、
「誰もが居場所を持てる社会への願い」
として読んでいる。
スライムから始まる物語は、
実は人間についての物語なのである。
転生したらスライムだった件(32)
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