
私は絵を描くことから創作の道に入った。だから、白いキャンバスに色を置いていくことは、ごく自然な行為である。しかし、そのキャンバスが女性の身体となった瞬間、私はこれまで経験したことのない緊張と向き合うことになった。
人肌は、布や紙とはまったく異なる。この世で最も繊細で、最も尊いキャンバスである。しかも、それは平面ではなく、呼吸し、鼓動し、体温を宿した立体だ。光を受ける角度によって表情を変え、わずかな筋肉の動きさえ、一つの色彩に意味を与えてしまう。
私は色を塗っているのではない。身体という造形と対話しながら、その人だけが持つ存在の輪郭を探しているのである。どこに筆を置き、どこに余白を残すのか。その一筆一筆には理由があり、偶然はない。
絵筆が肌に触れるたび、モデルの身体はかすかに反応する。その微細な変化は、緊張なのか、安心なのか、それとも創作に身を委ねる静かな覚悟なのか、私にはわからない。ただ一つ確かなことは、その瞬間、描き手とモデルは「描く者」と「描かれる者」という関係を超え、一つの作品を共に生み出す表現者となっているということだ。
芸術とは、色彩を重ねる技術ではない。人と人との間に生まれる見えない信頼を、形あるものへと昇華させる営みなのである。そして私は、そのことを教えてくれたのは、真っ白なキャンバスではなく、一人の女性の温もりを持つ肌だったと、今でも深く感じている。
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