
写真は、撮る人の感性によって生まれる芸術である。しかし、写真家が自分を表現しようとする気持ちばかりが前に出ると、被写体はその陰に隠れてしまう。人物写真の主役は、あくまでもレンズの前に立つ人であり、その人が歩んできた人生である。写真家は、その魅力を引き出す案内人であって、舞台の中心に立つ存在ではない。私が心掛けているのは、自分の技術を見せることではなく、被写体が自然に語り始める瞬間を静かに支えることだ。そのとき初めて、一枚の写真は飾りのない真実に近づいていくのだと思う。
展示会が近づいてくる。展示作品が決まれば、その原画をフォトショでくまなく確認し、絵画を仕上げていくように”塗り直し”ていく。数十時間ののち、仕上げた画像と原画を見比べる。編集処理された画像は”完璧”に近づくが、同時に大切な何かが失われていった感は拭えない。
